移民のコスト

自民、外国人定住へ基本法・「移民庁」設置など検討 NIKKEI NET(日経ネット):主要ニュース

 補充移民の受入により、追加的財政負担等が発生する可能性があることについて指摘しておきたい。

コラム:人口減少経済と移民等に関する一考察(経済学の視点から)
http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/column/oguro_001.htm

 Grubel(1994)のモデル*1を用いた分析より、未熟練外国人労働者・移民の受け入れは、先進国の労働者の経済的厚生を低下させる可能性があることがわかる。厳密にいうと、先進国労働者の賃金が減少してもその減少分よりも企業利潤の増加分のほうが大きいことからその増分が適切に分配されれば、先進国労働者の経済的厚生は増加することになるが、そうでない場合には、未熟練外国人労働者・移民と競合する生産性の低い階層の労働市場が影響を受けることとなる。
 また、外国人労働者・移民の受け入れは、国内の未熟練労働者の職を奪うだけでなく、政府に財政的負担等を発生させているという批判も存在する。すなわち、外国人労働者・移民の受け入れは、子供の教育や家族の医療などの財政的負担、あるいはその他の社会的コストを追加的に発生させる可能性が高いというのである。当然に、外国人労働者・移民は歳入増加やGDPに貢献するが、欧米の推計では、プラス面とマイナス面を考慮すると、ネットではマイナスになるという試算もある。このため、この財政等に与える影響を緩和させるための方法*2も重要となる。もっとも、こうした試算は、その仮定の置き方でプラスにもマイナスにもなる可能性がある。
(以上、「人口減少経済と移民等に関する一考察(経済学の視点から)」(2007.6.18, PRI研究部主任研究官 小黒一正氏)より要約抜粋。)

*1:Grubel(1994)は、「未熟練労働力を受け入れた時、国内労働者の効用が低下する。これが単純労働者受け入れを抑制する根拠となる。熟練労働者を受け入れた場合は、受入国側の限界生産性が高まることで国内労働者所得は変化せず、かつ、資本所得は増加することから、結果積極的に熟練労働者を受け入れることになる。」と説明した。

*2:コラムでは、Gary S. Beckerの"auction off immigration slots"に言及している。