利上げを巡る冒険

NIKKEI NET:経済 利上げなら議決延期請求を、自民幹事長が政府に呼びかけ
NIKKEI NET:経済 大田経財相、追加利上げをけん制
NIKKEI NET:経済 経財相、追加利上げをけん制

 前回2000年8月の議決延期の請求は否決され、ゼロ金利は解除。日本経済がデフレーションに沈む悲惨な結果となった。仮に今回利上げを行うとして、今回、議決延期請求権の行使はあるのか?行使されたとして、再度否決されるのか?

(追記)

 http://d.hatena.ne.jp/qh-nu/20070114#1168788683

 報道を見る限り、「そういう道を繰り返すならば」と限定されています。現況での日銀の利上げに関するロジックは弱いです。以前、自己の立場に固執し、それを貫き通した挙句失敗したのですから、二度目は無いと言ってもそれ程不見識ではないでしょう。日銀の独立性については、以下の文章が私の意見とほぼ同じです。私が書くよりも明快に纏められていますので引用します。

不人気な政策を行うための独立性

 インフレの時期に、マクロ経済の安定化のため不人気な金融引締めをあえて行うことが中央銀行の責務であり、そのためにこそ独立性は政府に対してだけではなく、議会に対しても保証されねばならない。このことは、じつはインフレの場合にだけではなく、デフレの場合にも成り立つのだ。いや、上に説明したように日本に関するかぎり、デフレの場合にこそ国民の反対を押し切ってでも強力な政策をとることが、中央銀行に求められているとさえ言えるのである。ところが、速水総裁の選択した中央銀行の独立性を発揮する方向はまったく逆だったのである。

 2000年8月のゼロ金利解除は、こうした独立性に関する速水日銀の誤解を白日の下に晒すことになった。当時、ITブームの余韻冷めやらず、日経平均株価は2万円台にあり、景気は拡大局面にあった。だが、その拡大は史上最高の失業率を記録したところからの拡大に過ぎなかったし、多くのIT企業が上場しているNASDAQ市場は5月には暴落しており、肝心のITブームの行方には警戒信号が点滅していたのである。しかも、デフレは依然としてつづいていた。さらに、OECDIMFといった国際的な経済政策機関、アメリカ政府、日本人以外の有力なマクロ経済学者のほとんどすべて、そして日本政府も、この時期の金利引上げには反対を表明していたのである。ところが、そうした批判を無視して利上げが実行された。その理由付けは、明らかにゼロ金利をつづけることが日銀にとって屈辱的である上に、その維持を外部から強要されることに対する反発だったのである。つまり、独立性が貫徹されたのだ。そして、日本の多くのマスコミはこの決断を英断と褒めたたえ、日銀に不当な干渉を加える政府を批判したのである。

 こうした経緯を見てくればもはや、何が構造問題なのかは、明らかだろう。現在の日銀は、本来要請される中央銀行の独立性を保ってはいないのだ。内外の政府や国際機関あるいは経済学者の「干渉」からは独立しているが、専門家集団として、必要であれば無視しなければならない近視眼的利害にのみ忠実な「世論」に対して独立性を発揮していないのである。プロ中のプロと賞賛される新総裁は、果たして専門家としての責務をまっとうし、真の意味での日銀の独立性を貫徹できるのだろうか? 日本経済の運命は、まさにこの一点にかかっていると言っても過言ではないのである。

岡田靖 「『日銀の独立性』再考」
http://www.inose.gr.jp/mailmaga/mailshousai/2003/03-3-6.html