発展なくして所得格差の縮小なし

中国経済新論 中国の経済改革 「発展なくして所得格差の縮小なし」
北京大学光華管理学院教授 張維迎
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/060908-1kaikaku.htm

(出所)経済観察報2006年3月11日
http://www.eobserver.com.cn/jjgcb/yaowen/2006/03/11/17468.html

 良い論文だと思う。「中国経済新論」で邦訳されているので紹介します。ただ、文中の大学定員数については疑問があるのでその点について詳述します。中国では高等教育を受けた人材が数量として過剰である事の弊害がすでに起きていると思われるからです。(例えば、大学卒業生の零工資就業。*1 )これらの問題は、先進国でホワイトカラーの需要が限界に達するという形で表面化していますが、社会資本ストックと個人資産が十分に蓄積されていない中進国である中国がこの問題に直面することはかなり深刻です。また、高等教育の陳腐化が相対的貧困層の上昇機会を奪いかねません。確かに入学の機会があったほう良いという事はその通りですが、バランスを無視しサプライサイドに偏った政策は有効性に猜疑があります。批判はあるにせよ、メリットクラシーによる階級エレベーターが上昇ルートとして機能する以上、機会平等と効率の観点からみてそれが無くなることの害悪は否めないでしょう。