テロ時代の思想戦
テロ時代の思想戦
――テロを煽るヒズブ・タフリルの正体/ゼイノ・バラン
Fighting the War of Ideas / Zeyno Baran
http://www.foreignaffairsj.co.jp/shop/koukai/2005_12baran.htm
ヒズブ・タフリルの脅威
少なくとも現時点では、イスラムと西洋の間で文明の衝突は起きていない。だが西洋は、イスラム世界内部におけるイデオロギー抗争に巻き込まれつつある。
ここでいうイデオロギー抗争とは、「イスラムは民主主義や社会的な自由と両立できる」と考える勢力と、「現在の世界秩序を、(宗教・政治上の権限をもつイスラム指導者)カリフによる統治に置き換え、世界規模のイスラム国家を誕生させる」と決意している勢力間の対立である。文明を衝突させようとしているのは後者のカリフによる統治を目指す勢力で、その目的のひとつは、文明の衝突を演出することで、自分たちのイスラム教の解釈をイスラム穏健派に受け入れさせることにある。
テロや政治的暴力を通じてイスラム的統治を実現しようと試みていることで有名になったのが、アルカイダのようなイスラム過激派組織だとすれば、一方で、直接的軍事行動ではなく、イデオロギー闘争を通じて、アルカイダのようなテロ集団を支援している組織もある。そうした組織のなかでもっとも重要なのがヒズブ・タフリル(解放党=HT)で、この国際的イスラム主義運動こそ、スンニ派のイスラム過激派にイデオロギーを授けている。