Grand Chessboard

 Zbigniew Brzezinskiの地政学で世界を読む―21世紀のユーラシア覇権ゲーム(原題: The Grand Chessboard: American Primacy and Its Geostrategic Imperatives)読了。

 Z.Brzezinskiはカーター政権の国家安全保障担当大統領補佐官。1997年に初版が発行された古い本だが、今読んでも多くの示唆に富む良書。文庫版なので、2003年2月時点の著者に対するインタビューが巻頭に付記されている。

 以下、個人的な留意点。
アメリカ(著者)にとっての、中国の存在感の大きさ。
・ロシア及びハートランド(ユーラシア中央部)の重要性。
・ヨーロッパは、アメリカ(筆者)にとって心理的に極めて大きい存在感と影響力がある。(過大評価?)
・地政戦略に参加してない日本の存在の小ささ。
・ヨーロッパの統合と拡大の勢いが衰える兆項があると予見。
・ユーラシア中央部のエネルギー資源、鉱物資源の重要性に対する正確な認識。
・中国を敵視していない。
・結論部での「根拠のない中国脅威論が高まった為に、中国国内で大国願望論が起こっており、米中の対立が激化するとの予想そのものが現実を生み出すことにもなりかねない」という危惧は、残念ながら適中。
・中国に対して楽観的。中国は日本よりも重要。米中両国は、自然に相互を同盟国と見做すようになる潜在性があると予見。(「日本を素通りする」危険性は常時からある)
・日本の民主主義と経済発展の成功そして非軍事大国化は、理想的。


 感想としては、日本は米、露、中と勢力圏及び国境を接しているため、それらから受ける圧迫が厳しい事が再確認されたことがまず第一点。また、著者の論理に拠れば、伝統的な安全保障の概念(軍事力・生産力を基準にした国力の計量)において、日本は地政上では第三者的でしかないと考察される。
 当時の観測と現状とのずれも興味深い。